使い勝手をテストするために、仮想ユーザーにタスクを与えて操作してもらうテストのことをユーザビリティテストまたはユーザーテストと呼びます。私は大手総合電機メーカーのデザイン部門にいた際に、このテストを数え切れないほどに、おそらく100回以上は実践ないしは観察をしました。その頃の経験を差し障りない程度にご紹介するとともに、ユーザビリティテストの経験をすることのススメを致します。

なぞる操作は必然だった?ユーザビリティテスト(ユーザーテスト)のススメ

ユーザビリティテスト(ユーザーテスト)とは?

ユーザビリティテストは、ユーザーに提供する製品・サービスの使い勝手向上を目的とした調査をする手法です。達成してもらいたいことをタスクとして与え、そのタスクの目的達成をめざして操作してもらいます。このとき、ただ操作してもらうだけだと、つまづいたときに何が原因であるか分からなくなってしまうため、できるだけ考えていることを声に出しながらやってもらいます。この手法のことを思考発話法(または発話思考法)と呼びます。テストに協力していただく人のことは日本語だと「被験者」と呼ぶのが一般的かもしれませんが、英語ではParticipantと呼びます。「被験者」はなんとなく呼ばれた側はいい気分がしなさそうなので「参加者」と呼ぶようにすると良いと思います。

実施イメージとしては次のような感じです。

タスク:
予約日時を変更する

つまづいた参加者の発話:
「予約日時変更」という感じの言葉が書かれたボタンを探していますが見つかりません

正解フロー:
いったん削除して新規に登録しなければならない

このとき発話がなければ、しばらく経って「削除」を押して「新規登録」に進んでしまうかもしれません。それだと分かるのは、ただしばらく操作をせず画面を見つめていたという事実だけになってしまいます。

普段声に出しながら操作をするなどということは普通しないので(もし普通だよ、という方いれば、公共の場では迷惑なのでやめましょう)、参加者は黙ってしまいがちです。
テスターは、適切なタイミングで、答えに導かないように注意しながら発話を促していかなければなりません。これが結構難しくて、神経を使うので疲れます。
ただ、これはプロがやる仕事の話で、そこまでかしこまって考えてると前に進まないので、とにかく簡易的でもいいからテストをする、ということを私はおススメします。

ユーザビリティテストで分かることと得られること

大体上述の例で分かるかと思いますが、ユーザビリティテストを実施すると、ユーザーがつまづくであろう箇所と、その原因がわかります。テスターはあらかじめ、問題が出そうな箇所を見抜いておいて、その問題が明らかになるように計画的に進めます。正直、私レベルになるとテストを実施しなくても大体問題となる箇所は分かります。これをちゃんとした言葉で「エキスパートレビュー」と表現したりもします。だったら「エキスパートレビュー」だけでよい、というのは実情としてありますが、ユーザビリティテストを見ることで、ユーザーの行動がいかに自分が想像するものと乖離するのか、ということもわかるので、関係者が今後に向けてそれを知り、学習するということの方が実は大切なことだったりもします。

まとめると、ユーザビリティテストで分かること、結果得られることは主に下記2点です。

  • ユーザーがつまづくであろう箇所と、その原因が分かり、改善に向けた施策を検討できる
  • ユーザーの行動がいかに自分が想像するものと乖離するかを製品・サービスの関係者が知り、その後の開発サイクルの品質が向上する

ちなみに上述の例は、あまりにも低レベルな問題だと思われるかもしれませんが、私が2022年11月現在において、実際に仕事で利用している「とある業務用システム」で存在する問題です。それについては「予約日時」とはちょっと違いますが、似たようなものです。もうホントに使い勝手ひどいので、私しょっちゅうサポートに電話してます(笑)。ユーザビリティエンジニアのプロとしての一面も持つ私は、良かれと思って、「これこうするのが一般的ですよ」という超絶余計なお世話を言うのですが(笑)、どういう答えが返ってくると思いますか?

「これが当サービスの仕様です。」

その言葉出てきたとき、「出たっ!」と心の中で叫びました。聞き飽きるくらい聞いてきた言葉です。その会社に対して言っているわけではなく、大体こういう態度なんですよね、サービス提供者側は。そして、ユーザビリティテストを見た後には、その態度は変わります。

何人でテストすると良い?

次のグラフはユーザビリティに関する研究者としての第一人者、ヤコブニールセンの研究結果で、5人テストすると85%の問題が抽出され、3人で確か60%ぐらいが抽出されるということがデータで示されていると思います。

これは私の実体験としても感覚的に合っています。80%という数字から5人が推奨されることが多いですが、私個人的なおススメは3人ですね。何故ならば、上述の通り、ユーザビリティテストを実施することの目的は、問題を解決することよりも、関係者が今後に向けて学ぶということの方が大きいと思っているからで、費用対効果の面です。

逆に言うとです、5人実施しても15%の問題は発見できないのです。なので、テストの観察結果だけが印象に残って、その結果だけをもとに考えるというのは危険でもあります。

要するに私が言いたいのは、テストをして現実を知り、エキスパートの声に耳を傾けよ、です。

ちなみに私の場合5人テストしていると、大体4人目から飽きてきます(笑)
だって、60%以上はもう目の当たりにしている問題なので、仕方がないですよね?
これは私の問題もありますが、まあそういうこともあります。

引用:
Jakob Nielsen and Thomas K. Landauer. 1993. A mathematical model of the finding of usability problems. In Proceedings of the INTERACT ’93 and CHI ’93 Conference on Human Factors in Computing Systems (CHI ’93). ACM, New York, NY, USA, 206-213. 

20年近く前に私も驚いた結果、それは現在においての当たり前だった

20年近く前。とあるタッチパネル製品を高齢者を対象にしてテストしたときのことです。ほとんどの参加者がタッチパネルのとある箇所をなぞりました。

え?当たり前でしょ?

と思われるかもしれませんが、当時、なぞれるタッチパネルなど、誰も想像してませんでした。タッチパネルは駅の券売機のように、タッチしかできないのが当たり前。なので、その固定概念を植え付けられた若年者ではそのような操作はしないのですが、高齢者は違いました。なぞっても動かないので、「あれ?」という感じになります。

確かに、その箇所は、UIがなぞれるような見た目をしていました。でも私は、最初にそれをなぞられるまで、そういう行動を取られるとは正直思いませんでした。

しかし、次の参加者も、また次の参加者も、そこをなぞりました。

この結果に対して、関係者は「ふーん」くらいで終わってしまったように記憶しています。

その数年後。

iPhone, iPod touchという製品に用いられたiOSのユーザーインターフェースが世界を驚かせます。しかし驚いたのは固定概念を持っていた人だけです。子供も2歳にもなれば、タブレットは使えます。親が教えたわけでもないのに、軽やかに、当たり前かのように画面をなぞります。2歳の子供は、その結果に驚いたりなどしません。期待通りの結果に対して嬉しそうに、操作を続けます。なぞるという操作は人間にとって直感的だということです。

iOSは、決してプロダクトアウトなものではなく、愚直にユーザービリティテストなどを繰り返し研究した結果なのだろうと私は思っています。

この時の問題は私はこういう風に表現します。

タッチして選ぶ必要のある個所を参加者はなぞった。
ユーザーの期待する操作方法と製品の仕様との乖離。

ちなみに、こういう話をすると、人によってはこう言うと思います。

次は映画マトリックスの世界だねと。

ジェスチャーで操作できるようになる、という世界ですね。
それは、私は違うと思っています。2歳の子供がジェスチャーでものを操作しようとすると思いますか?それは大人が描く夢の世界であって、決して直感的な操作ではないのです。これまで研究されつくされていると思いますが、まずジェスチャーのルールを決めるのが難しい。他にも色々と問題があり、おそらく実用的にはならないだろうと個人的には思っています。

新型コロナの影響からか、おそらく衛生面を理由に触れずに操作できるタッチパネル(もはやタッチパネルではないですが)が発券機として置かれているお店を知っていますが、意図した場所が操作できずイライラします。タッチして操作しようとしても、タッチする前に反応してしまうので、何度かやり直す必要があります。2022年時点においてそのレベルですしね。

受け入れられるUIというのは、直感的で、分かりやすくて、スムーズで、心地よいかどうかということに依存します。

ユーザビリティテストの方法

以前は、参加者1人とテスター1人の2人だけの空間を、ハーフミラー越しに観察者が見るというのがユーザビリティテストの一般的な実施形態でした。そのようにハーフミラー越しに2つの部屋を並べるk形態をテスティングルームと呼びます。

しかし現在はどうでしょうか、私は詳しくありませんが、UIが評価対象の場合はおそらくオンラインで実施するケースの方が多いでしょうね。参加者の負担も小さいですし。

ユーザビリティテストのススメ

UXの専門家になりたいわけでもなければ、私は何度もユーザビリティテストを実施しましょうと言うつもりはありません。たったの1度でいいので、体験することを強くおススメします。

1度経験した人と、そうでない人では、その後のアウトプットの品質に差が生じると思います。

私自身は、ユーザビリティテストを何度も実施する中でユーザーの行動パターンというのが頭に入り、こういう場合はこうなる、という想像がつきやすくなりました。

BringFlowerはウェブ制作とSEO対策をメイン事業としていますが、お客様からUX、UIに関するアドバイスを求められることは多いです。色々聞かれても、適切なアドバイスができているからだと思います。

まとめ

ユーザビリティテストとはどういうもので、どういったことが分かるのかをご紹介しました。
ユーザビリティの悪いホームページは離脱率が上がり、結果的にSEOに悪い影響を及ぼします。Googleは、SEOに対してUX重視、の宣言をしています。
SEOに留まらず、UX、UIまで優れたホームページを制作できるBringFlower。デザインまで実施。価格はリーズナブル。もはや一択です!

著者のイメージ画像

BringFlower
稲田 高洋(Takahiro Inada)

2003年から大手総合電機メーカーでUXデザインプロセスの研究、実践。UXデザイン専門家の育成プログラム開発。SEOにおいても重要なW3Cが定めるWeb標準仕様策定にウェブアクセシビリティの専門家として関わる。2010~2018年に人間中心設計専門家を保有。その後、不動産会社向けにSaaSを提供する企業の事業開発部で複数サービスを企画、ローンチ。CMSを提供し1000以上のサイトを分析。顧客サポート、サイト運営にも関わる。2022年3月にBringFlowerを開業し、SEOコンサル、デザイン、ウェブ制作を一手に受ける。グッドデザイン賞4件、ドイツユニバーサルデザイン賞2件、米国IDEA賞1件の受賞歴あり。