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オウンドメディアは意味がない?資産となるオウンドメディアの育て方

オウンドメディアは成功すれば資産となります。そのため多くの企業がオウンドメディアに取り組み、そして多くの失敗事例が生まれています。

失敗事例が多いので、「オウンドメディアは意味がない」というような話を聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。

この記事では、オウンドメディアが失敗に終わる原因と、成功に導くための秘訣を徹底解説します。目標設定の曖昧さ、コンテンツの質の低さ、効果測定の不備、リソース不足といった失敗要因を明らかにし、明確な目標設定、質の高いコンテンツ制作、継続的な改善、運用体制の構築といった成功への鍵をご紹介します。

オウンドメディアとは?

オウンドメディアは、企業が自社で所有・運営するメディアのことで、ブログのような記事を多くアップするウェブサイトのことを指して呼ばれることが多いです。

厳密には、以下のようにペイドメディアやアーンドメディアと区別されます。ペイドメディアは広告など有料で運用するメディア、アーンドメディアはSNS上の口コミやニュースサイトの掲載など、第三者からの評価によって獲得するメディアを指します。

種類概要
オウンドメディア企業・個人が保有し、自由に運営可能な媒体(Webサイト、公式ブログ、SNSアカウントなど)
ペイドメディア広告費用を支払って運用する媒体(Web広告、テレビCM、新聞広告など)
アーンドメディア第三者からの評価や口コミ、新着情報サイトへの掲載などによって自然に得られるメディア

オウンドメディアは、自社コンテンツを自らの意志で制御できる点が最も大きな特徴です。ペイドメディアやアーンドメディアと組み合わせることで、総合的なマーケティング戦略を策定・実行しやすくなります

近年、多くの企業がオウンドメディアの運用に取り組んでいますが、「オウンドメディアは意味がない」という声もあるようです。

オウンドメディアのメリット

オウンドメディアには主に以下のメリットがあります。

  1. 自社サービスやプロダクトの集客となる
  2. 認知度向上
  3. ブランディング

ただし、これらすべてのメリットを享受しようとするのではなく、あらかじめ何を目的に、どのようなターゲット層に対して、どのような内容を発信するかの戦略を策定して進めていくことが重要となります。

また、オウンドメディアは、企業やブランドにとって長期的に蓄積できる情報資産となる点が魅力です。しっかりと運用されたサイトやブログは検索エンジンからの評価が高まり、SEO効果を高めて継続的なアクセスを獲得しやすくなります。また、投稿された記事やコンテンツが共有されることでユーザーとの接点が増え、見込み客の獲得やブランドロイヤルティの向上に寄与します。

さらに、オウンドメディアはコーポレートサイトやECサイトなどと連携させることで、潜在顧客の購買意欲を高めたり、企業イメージを訴求したりといった様々なマーケティング施策を展開できる点も特長です。

一時的な広告と異なり、完成したコンテンツがネット上に残り続けるため、積み上げ型の資産として、時間が経つほど効果を発揮する可能性があります。ただしコンテンツの質や更新頻度が低い場合は検索順位が上がりにくくなるため、専門性や独自の価値を打ち出す努力を怠らないことが大切です。

オウンドメディアは意味ないと言われる理由

それでは、「オウンドメディアは意味がない」と言われる理由はなんでしょうか?
ここでは、その理由について詳しく解説します。

そもそもの目標設定が曖昧

オウンドメディアを運用する上で、最も重要なのは目標設定です。にもかかわらず、目標が曖昧なまま運用を開始してしまっているケースが少なくありません

なんとなく「流行っているから」「競合がやっているから」といった曖昧な理由で開始した場合、どのような成果を目指すべきか、どのようなコンテンツを提供すべきか、判断基準が定まらず、結果として「何のためにやっているのか」という疑問に直面することになります。

例えば、売上向上を目的とするのか、ブランド認知度向上を目指すのか、顧客エンゲージメントを高めたいのか、具体的な目標設定が必要です。目的が不明確なまま運営を続けると、効果測定も困難になり、費用対効果が見えにくくなってしまいます。

また、目的が曖昧な状態では、コンテンツの方向性も定まらず、読者にとって魅力的なコンテンツを提供することが難しくなります。結果として、サイトへのアクセス数が伸び悩んだり、読者のエンゲージメントが低下する可能性があります。

目的を明確にするためには、まず自社のビジネス目標を理解し、オウンドメディアがその目標達成にどのように貢献できるかを考える必要があります。その上で、具体的なKPIを設定し、定期的に効果測定を行うことが重要です。

目標具体例陥りやすい状況
認知度向上「多くの人に自社を知ってもらいたい」・具体的な数値目標がない
・どのような層に認知を広げたいかが不明確
ブランディング「企業イメージを向上させたい」・どのようなイメージを持たれたいかが不明確
・イメージ向上のための具体的な施策がない
リード獲得「問い合わせを増やしたい」・目標とする問い合わせ件数が不明確
・どのような層からの問い合わせを増やしたいかが不明確

効果測定が不十分

オウンドメディアの運営において、効果測定が不足すると、オウンドメディア運営の意義を見出しづらくなります。効果測定を行わないと、どのようなコンテンツが読者に響いているのか、どのような施策が効果的なのかを把握することができません。その結果、改善策を講じることができず、効果的な運用ができないまま続けることになってしまいます。

例えばGoogleサーチコンソールGoogleアナリティクスなどのツールを活用し、検索順位、アクセス数、滞在時間、コンバージョン率などの指標を定期的にチェックすることが重要です。検索順位は特に重要な指標で、その推移を自動的に計測してくれるBringRitera(リテラ)はとても便利なツールです。こういったツールを使って得たデータを分析し、コンテンツの改善や戦略の見直しに繋げる必要があります。

効果測定を行う際には、単に数値を追うだけでなく、その数値が示す意味を理解することが重要です。例えば、アクセス数が多かったとしても、滞在時間が短ければ、コンテンツの内容が読者に響いていない可能性があります。また、コンバージョン率が低い場合は、導線設計に問題があるかもしれません。このように、効果測定の結果を多角的に分析することで、より効果的なオウンドメディア運営が可能になります。

コンテンツの質が低い

オウンドメディアの成否を左右する最も重要な要素の一つが、コンテンツの質です。読者のニーズに応えられない、役に立たない、面白くないコンテンツは、読者の離脱を招き、サイトの評価を下げてしまいます。コンテンツの質が低い状態が続くと、サイトへのアクセス数が伸び悩むだけでなく、ブランドイメージの低下にも繋がる可能性があります。質の高いコンテンツとは、読者にとって有益で、独自性があり、信頼できる情報を提供しているものです。そのためには、徹底的なリサーチを行い、読者のニーズを深く理解し、専門家による監修を受けるなど、様々な工夫が必要です。

また、コンテンツの質は、文章の分かりやすさや、デザインの美しさ、情報の正確性など、様々な要素によって構成されます。これらの要素を総合的に高めることで、読者にとって魅力的なコンテンツを提供することができます。

コンテンツの質を高めるためには、時間と労力が必要ですが、その努力は成果へと結びつきます。

リソース不足

オウンドメディアの運営には、人的リソース時間予算など、様々なリソースが必要です。これらのリソースが不足していると、質の高いコンテンツを継続的に制作することが難しくなり、オウンドメディアの運営が停滞してしまう可能性があります。特に、コンテンツ制作には、企画、執筆、編集、デザインなど、多くの工程が必要であり、それぞれに専門的なスキルが求められます。これらのスキルを持つ人材が不足している場合、外部の専門家に委託することも検討する必要があります。しかし、その場合でも、予算が必要となります。

また、オウンドメディアの運営には、コンテンツ制作だけでなく、テクニカルなSEO対策や、効果測定、改善策の実施など、様々な業務が発生します。これらの業務を経験の小さい担当者がこなすことは難しく、負担が大きくなり、結果として、オウンドメディアの運営が疎かになってしまう可能性があります。

リソース不足を解消するためには、まず自社の現状を把握し、必要なリソースを明確にする必要があります。その上で、予算を確保し、人材を育成したり、外部の専門家と連携したりするなど、様々な対策を講じる必要があります。

SEO対策が不十分

オウンドメディアを運営する上で、SEO対策は非常に重要です。SEO対策が不十分だと、せっかく質の高いコンテンツを制作しても、検索順位は上がりません。SEO対策は、キーワード選定、内部リンク最適化、サイト運営者や執筆者の明示など、様々な要素があります。これらの要素を適切に実施することで、検索エンジンのランキングを向上させ、より多くの読者をサイトに誘導することができます。しかし、SEO対策は専門的な知識が必要であり、常に最新の情報をキャッチアップしていく必要があります。そのため、SEO対策に精通した担当者がいない場合、外部の専門家に委託することも検討する必要があります。

SEO対策は、一度行えば終わりではなく、継続的に改善していく必要があります。検索エンジンのアルゴリズムは常に変化しており、それに対応していく必要があります。また、競合サイトのSEO対策も常に変化しているため、自社のSEO対策を定期的に見直し、改善していくことが重要です。

SEO対策については、以下の記事も参考にしてください。

SEOとは?4つの軸と3つの視点に基づいてやり方を解説

本記事を読むことで、オウンドメディアが「意味がない」と感じられる背景、成果を出すうえで欠かせないSEO対策やターゲット設定、独自性あるコンテンツ制作などを総合的に把握できます。また、楽天など国内企業の事例から得た学びを活かし、運用コストに見合う効果を生むメディアを長期的に育てるポイントをつかみとれます。さらに、継続的な見直しやコミュニティ形成など多角的な取り組みを知ることで、企業の資産へと成長させる方法が明確になります。

成果を出すために必要なポイント

失敗事例の多くは運営方針が明確になっていなかったり、コンテンツ改善の継続的な取り組みが不足していたりすることで生じるものです。ここでは、オウンドメディアの成果をきちんと出すために押さえておくべきポイントを解説します。

ターゲットと目的の明確化

まずはターゲット選定と目的設定などの基本戦略を固めることが重要です。想定読者のペルソナを定義し、どのような問題を解決すべきか、あるいはどのような情報を提供するかなど、サイト全体の方向性を固めなければなりません。これがあやふやなまま運営をスタートしてしまうと、コンテンツに一貫性がなくなり、結果としてユーザーの離脱を招きやすくなります。さらに、主目的(リード獲得、商品購入促進、ブランド力強化など)をはっきりさせ、KPI(重要業績評価指標)を設定することで、具体的な成果指標を追うことができます。

例えば以下のように目標を設定し可視化することが大切です。

目標具体例
リード獲得問い合わせフォームからのCV数を月間10件以上
商品購入促進ECサイトへの誘導で売上を前年比120%以上
ブランド力強化ブランド名での検索ボリュームを半年で1.5倍に増やす

長期的な運用計画の策定

オウンドメディアは一朝一夕に成果を出すことが難しく、長期視点で育てていく必要があります。検索エンジンからの評価を高めるために、定期的なコンテンツ追加や更新、内部リンクの最適化などを続けることが不可欠です。加えて、季節やトレンドなど、ユーザーの検索ニーズが変化するタイミングに合わせてテーマを調整する柔軟性も求められます。

また、運営には一定のリソースを割く計画も大切です。担当者や編集体制、外注コストなどを含む予算を見込み、最低でも数カ月から1年、さらにそれ以上のスパンでPDCAサイクルを回すことを前提にするのが理想的です。こうした継続的な取り組みによって、オウンドメディアは徐々に検索順位を改善し、訪問者数やコンバージョン率を伸ばしていく可能性が高まります。

実際、運営開始後初年度は数値向上のペースが遅くても、2年目、3年目に大きく成長する事例も多く見られます。あらかじめ長期的なロードマップを作成し、進捗確認を怠らないことが成果につながるカギです。

継続的なコンテンツの見直し

オウンドメディアを運営していると、当初掲載した記事の中に検索意図とのズレが生じたり、情報が古くなったりすることがあります。そのため、定期的な記事リライトや情報更新、キーワード再検証によって、常にユーザーにとって有益で最新の内容を提供できるようにすることが大切です。

特にSEO対策の観点からは、コンテンツのクオリティや検索ニーズとのマッチ度が評価に直結します。上位表示を狙うのであれば、単に記事本数を増やすだけではなく、質を高める施策にも力を入れる必要があります。また競合サイトとの差別化を図るために、より専門性の高い視点や独自の事例などを盛り込むことが求められます。

このように継続的な見直しと改善を怠らなければ、大きなアクセス増とコンバージョン向上を狙えるオウンドメディアへと育てることが可能です。正式なリサーチやユーザーアンケートなどを行いながら、掲載内容を絶えずアップデートしていく努力が、成果の確実な積み上げにつながります。

独自性のあるコンテンツの制作

多くの企業がオウンドメディアを運営する現代では、同じような情報が溢れやすくなっています。そこで競合と明確に差別化できる独自の視点やノウハウを打ち出すことが、新規顧客の獲得やファン化に直結します。たとえば、ユーザーが疑問を感じやすいテーマに対する詳細な解説や、社内データの公開を含む独自リサーチ記事などは有効です。また、専門家やインフルエンサーへの協力を仰ぎ、客観的な意見や具体的事例を盛り込むことで、記事のクオリティが高まり信頼性が増します。

さらに、コンテンツを制作する際には、検索ニーズをくみ取りながらも読者に「ここでしか得られない情報がある」と思わせる仕掛けを用意するのがポイントです。これにより検索エンジン評価だけでなく、SNSでの拡散やファンの育成にもつながりやすくなります。

集客チャンネルの開拓とファン化

オウンドメディアに訪れるユーザーを増やすうえでは、検索エンジンへの対策だけでなくSNSやメールマガジンなど多角的なチャネルを活用することが大切です。一本化した導線では一時的な流入が増えても、中長期的に安定したアクセスを得るのは難しくなります。そこで、複数の経路からアクセスを獲得し、コンテンツの幅広い認知を促進していく戦略が求められます。

また、検索流入やSNS経由で初めてサイトを知ったユーザーを、そのまま離脱させずにファンとして定着させる仕組みを作ることが欠かせません。一般的には、会員登録やメールマガジンの購読、SNSでのフォローなどを通じて継続的に接点を持つことで、ユーザーとの信頼関係を深めていきます。

SNSやメールマガジンの活用

SNSの運用やメールマガジンの配信は、興味を持ってくれたユーザーに繰り返し情報を届ける有効な手段です。特に、Twitter、Instagram、YouTubeなどプラットフォームの特性を考慮しながら、配信内容を変えていくのがコツです。SNSでは魅力的なビジュアルや短文メッセージで注目を集めるのが効果的で、メールマガジンでは深い情報やクーポン配布など実利を感じられる施策が喜ばれます。

ただし、どちらの場合も一方的な情報発信に終始すると、フォロワーや読者が離れてしまう恐れがあります。ユーザーからのコメントや質問に迅速かつ丁寧に応対し“双方向”のコミュニケーションを意識することで、運営者とユーザーの距離感が近づきやすく、ファン化につながります。

コミュニティ形成による顧客との接点強化

オウンドメディアを資産に育てるためには、外部のプラットフォームだけでなく、メディア内や関連するオンラインコミュニティで読者同士が交流できる場を整備することが重要です。たとえば、コメント欄や会員限定フォーラムを設置してユーザー間の意見交換を促進すると、メディア自体への愛着が高まりやすくなります。

さらに、コミュニティ内で得られたユーザーの声や要望をコンテンツ制作やサービス改善に取り入れることで、価値の高い情報発信や商品の開発が行いやすくなります。こうして、継続的にユーザーとの距離を縮めながら運営を進める姿勢こそが、オウンドメディアが長期的に企業の資産として機能する大きな原動力となるのです。

まとめ

オウンドメディアを継続的に育てるには、ターゲットや目的を明確にし、地道な改善を積み重ねる必要があります。たとえば、トヨタ自動車が発信する技術情報や日本旅行が紹介する地域コンテンツのように、企業独自の視点を根付かせることで、より多くのユーザーと信頼関係を築くことができます。楽天市場やヤフーニュースのように、多様なコンテンツを通じて顧客との接点を洗練化し、長期的な成果に結びつけることが重要です。これにより企業の信頼度が高まり、ブランド価値が向上するだけでなく、売上にもつながりやすくなります。継続的な運用こそがオウンドメディアの真価を引き出す鍵と言えるでしょう。SEOに関するご相談はBringFlowerまで。

著者のイメージ画像

株式会社BringFlower
稲田 高洋(Takahiro Inada)

2003年から大手総合電機メーカーでUXデザインプロセスの研究、実践。UXデザイン専門家の育成プログラム開発。SEOにおいても重要なW3Cが定めるWeb標準仕様策定にウェブアクセシビリティの専門家として関わる。2010~2018年に人間中心設計専門家を保有、数年間ウェブアクセシビリティ基盤委員も務める。その後、不動産会社向けにSaaSを提供する企業の事業開発部で複数サービスを企画、ローンチ。CMSを提供し1000以上のサイトを分析。顧客サポート、サイト運営にも関わる。
2022年3月に独立後、2024年4月に株式会社BringFlowerを設立。SEOコンサルを活動の軸に据えつつ、AIライティングツールの開発と運営を自ら行う。グッドデザイン賞4件、ドイツユニバーサルデザイン賞2件、米国IDEA賞1件の受賞歴あり。